高校授業料無償化などで正式に合意し、写真に納まる(右から)公明党の斉藤鉄夫代表、自民党総裁の石破茂首相、日本維新の会の吉村洋文代表=2月25日、国会
高校授業料無償化などで正式に合意し、写真に納まる(右から)公明党の斉藤鉄夫代表、自民党総裁の石破茂首相、日本維新の会の吉村洋文代表=2月25日、国会

 少数与党だからこその政策なのか。野党の日本維新の会が求めた私立を含む高校授業料無償化が実現する見通しだ。教育に投資すること自体に異論はないが、どこかふに落ちない。

 そもそも地方に私立は少ない。文部科学省によると、東京237校、大阪94校に対して島根10校、鳥取8校。私立が多い都会の政策に思える。私立・塾の授業料の高騰や受験戦争の過熱化を招く恐れはないか。待遇や環境が良い都会の私立で教員を志す人が増えないか。定員割れする公立の地盤沈下がさらに進まないか。島根の実情を考えると、疑念が浮かぶ。

 2026年度以降に必要な予算は年5千億円超。島根県の25年度予算案4720億円より多い。財源の捻出策も決まっていない。

 無償化は09年に政権交代を果たした民主党が主張し、当時野党だった自民党は「バラマキだ」と批判していた。昨秋の衆院選で躍進した国民民主党が求める「年収103万円の壁」引き上げは年7兆6千億円の減収が見込まれる。天秤(てんびん)にかけて無償化をのんだのではないかと疑ってしまう。

 求められるのは支援を必要とする家庭や子どもに目を向けること。不登校やいじめへの対応、教員の働き方改革などやることは他にあると思う。都道府県に財源を渡し、地域の実情に即した方策を講じる方が石破茂首相が掲げる地方創生の理念に合う。「ただより高いものはない」。副作用が気になる。(添)