畳の製造工場。職人の手によって日本の伝統が守られている(資料)
畳の製造工場。職人の手によって日本の伝統が守られている(資料)

 転勤、進学、就職の季節が訪れる。新生活に向けて、住まい探しに忙しい人もいるだろう。最近の賃貸物件はどんなものかと不動産情報サイトを開き、つい見入ってしまった。快適そうな部屋のレイアウトにインターネットやケーブルテレビ対応も。時代は変わったものだ。

 ほとんどが木質系の材料を使ったフローリング。昭和生まれの田舎育ちには、間取り図で和室を表す黄緑色を目にするとほっとする。畳は硬すぎず、軟らかすぎず、夏はひんやり。若い頃、初めてフローリングのアパートで暮らしたが、なかなか慣れなかった。

 住宅の洋風化など生活様式は変化した。農林水産省の資料によると、畳表の国内生産量は減少が続く。輸入物の割合が高まるとともに、1996(平成8)年に約70%だった国内自給率は低下し、2007(同19)年以降は20%前後で推移する。

 材料になるイグサの作付面積も減り、現在はほとんどを熊本県での生産に頼る。元々イグサなどを使った敷物で、古事記にも「畳」の文字が記載されているという。日本らしい暮らしを支える伝統が失われはしないか心配になる。

 素朴な風合いの畳に触れると、気持ちが落ち着く。調湿効果や断熱性などの機能面からも良さを見直す動きがあるそうだ。「起きて半畳、寝て一畳」はぜいたくを慎むべきであるという言葉だが、部屋の畳も古くなった。そろそろ表替えでも考えてみようか。(彦)