山口県阿武町が新型コロナ対策の臨時特別給付金計4630万円を1人の住民に誤って振り込む前代未聞の騒動が発生したのは、3年前の今頃だった。20代被告はふいに手にした大金を海外のオンラインカジノにつぎ込んでいた。事案が特異過ぎたこともあってか、当時は使い道の違法性にそれほど目が向けられなかったと記憶している。
どうやらこの違法な賭博はまん延していたらしい。警察庁の推計で、海外のオンラインカジノを利用したことがある人は国内で約337万人、年間の賭け金は総額1・2兆円に上るというから驚く。芸人やプロ野球選手らの関与が明るみに出ているのは氷山の一角でしかない。
一獲千金を狙って大金を投じるというよりは、24時間、好きな時間に延々と続けてしまうのが特徴で、知らぬ間に依存状態に陥る怖さがある。スマホを使い、あたかもゲームに興じるかのような軽い感覚で。
そんなイメージも関係しているのだろう。言い逃れは別にして、「違法だと知らなかった」という人は少なくない。政府は違法性の周知啓発やサイトに誘導する広告の規制などギャンブル依存症対策の強化に動き出している。
では、利用が増える若者にこちらはどう説明したらいいのだろうか。大阪・関西万博の閉幕後は跡地で合法的にカジノが楽しめる国内初の統合型リゾート(IR)が計画されているという。裏目に出ないといいのだが。(史)