日本パンダ保護協会の名誉会長を務める黒柳徹子さん(91)がパンダに初めて“出会った”のが6歳の頃。叔父が米国土産としてパンダのぬいぐるみを持ち帰ったのが最初だった。
あまりのかわいさに肌身離さず、戦時下もリュックに入れ、背負って空襲の中を逃げていたという。日本ではパンダの存在すら知られていなかった時代。1人で研究を続けたが、どうしても実物を見たい。
そこで1968年、パンダを飼育するロンドンの動物園に足を運んだ。日中国交正常化を記念し、東京・上野動物園に2頭のパンダがやって来る4年前の話だ。
その後のパンダ人気は現在も続くが、徹子さんのように渡航しないと会えない時代が来るかもしれない。和歌山県白浜町のレジャー施設で飼育する全4頭のパンダが、貸与契約の満了によって来月末ごろに中国へ返還されることになった。国内で飼育されるパンダは4年前に生まれた上野動物園の双子のみになってしまう。その2頭の返還期限も来年2月20日に迫っている。
先日、上京した際、開園時刻に合わせて上野動物園を訪ねた。パンダ舎に直行したが、到着時点で「待ち時間60分」の表示。1時間近く並んだものの次の予定時間が迫り、あと少しで列から離れた。途中「もうパンダがいなくなるかもしれないから、今のうちに」という会話を多く聞いた。「パンダは遠くなりにけり」。そんな時代はさみしい。(健)