東京・上野動物園まで足を運んだのに、長蛇の列でパンダを見逃した話をきのうの小欄で紹介したが、帰路の羽田空港内で思いがけないものに遭遇した。1985年に第1作が公開された米国のSF映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』に登場した自動車型タイムマシンの「デロリアン」だ。
同作をミュージカル化した劇団四季の東京公演をPRするため、期間限定で展示されていた。デロリアンは81~82年に販売された米国産のスポーツカー。ステンレス製のドアが跳ね上がった姿に思わず「格好いい」という言葉が口をついた。
89年公開の第2作は、過去に戻った前作とは一転して未来が舞台。未来で大富豪になり、主人公のマーティをいじめる悪役ビフのモデルは、80年代に「米国の不動産王」として名をはせた現在のトランプ大統領とされる。
米国車が日本で売れていないと不満を示すトランプ氏は、輸入自動車に25%の追加関税を課し、日本も特別扱いしない意向だ。事業環境が読めなくなり、米国市場を主力とする日本の自動車メーカーは相次ぎ業績予想を下方修正している。主人公をいじめるビフの姿が、トランプ氏の関税政策に重なって見える自動車関係者もいるのでは。
第1作では日本車が主人公の憧れとして登場した。翻って今の米国車を「格好いい」と欲する日本人がどれだけいるか。関税を振りかざすだけでは米国車は売れまい。(健)