気温40度に迫る猛暑日となった三重県桑名市内を歩く人たち=2日午後
気温40度に迫る猛暑日となった三重県桑名市内を歩く人たち=2日午後

 今年の夏も暑すぎる。体感だが3週間近く雨を見なかった。これを炎暑というのだろう。涼しい話の一つも聞きたいところだが、暑くて怖い話の方が頭をよぎってしまう。

 この暑さ、人類が二酸化炭素(CO2)を増やしたので地球が温暖化し気温が上がった、というのが通説。確かにCO2の多さと気温の高さには相関関係があるものの、地球が温暖期に入って気温が上昇したのでCO2が増えた、と逆の因果関係を唱える専門家もいる。

 それを根拠にしたのかは知らないが、トランプ大統領の米国をはじめ脱炭素(CO2削減)に距離を置く国が増えた。人口の多いインド、中国、ロシアは化石燃料の発電所を増やした。因果応報、異常気象の悲劇というパニックホラー(現代の怪談)が現実味を帯びている。

 全世界の人口80億人のうち、日本も含めた長寿国には10億人が暮らしている。安い化石燃料を大量消費して先進国となり、人類の夢ともいえる長寿国になった。残りの70億人が今、先進国に倣って化石燃料を大量に使い始めている。

 70億の人たちに後戻りしろとは言えない。芥川龍之介の小説『蜘蛛(くも)の糸』では、お釈迦(しゃか)様が垂らした蜘蛛の糸に縋(すが)りつく罪人が、後から登る者を追い払おうとした時、手元の糸がぷつんと切れる。今、われわれの足元に広がるのは異常気象という奈落(地獄)。落ちないためには先を行く国にも賢い振る舞いが求められている。(裕)