松江水郷祭湖上花火大会で、上空と湖面を鮮やかに彩った打ち上げ花火=3日夜、松江市の宍道湖岸
松江水郷祭湖上花火大会で、上空と湖面を鮮やかに彩った打ち上げ花火=3日夜、松江市の宍道湖岸

 「絵画のように湖面を彩る華やぎの花火大会」-。プログラムの表紙にあったキャッチフレーズに偽りはなかった。2、3の両日に開かれた松江水郷祭湖上花火大会。宍道湖岸から眺めていると、湖面がカラフルな色で染まり、火花が降り注いでくるような迫力。思わずスマホを取り出し、何枚も写真を撮った。

 同じように水面に映る美しい花火を見たことがある。広島に勤務していた25年前の話。世界遺産・厳島神社がある広島県廿日市市の宮島で毎年8月に開かれていた「宮島水中花火大会」だ。満開の花火をバックに鳥居のシルエットが浮かび上がる光景はまさに絵画のよう。幻想的だった。

 しかし2019年を最後に大会は半世紀近い歴史に幕を閉じた。約5万人が島を訪れ、終了後に帰宅客がフェリー桟橋付近にあふれるなど安全対策を講じるのが困難になったと、主催者が苦渋の決断を下した。

 残念に思っていたが、別の団体が「厳島水中花火大会」として10月18日に復活させるという。江戸時代から日本中で愛されてきた伝統文化の継承と地域活性化、そして今年は被爆80年の節目を迎えることから平和への願いを込めた大会にするそうだ。

 打ち上げ花火の源流となった東京の「両国川開き大花火」は江戸時代、大飢饉(ききん)や疫病による死者の供養を目的に始まったとされる。復活の花火は原爆死没者の鎮魂になるだろう。きょうは広島原爆の日。(健)