スマートフォンを見る中学生。愛知県豊明市はスマホ使用時間の制限を呼びかける条例案を提出した
スマートフォンを見る中学生。愛知県豊明市はスマホ使用時間の制限を呼びかける条例案を提出した

 「いい一日だった」と感じるには24時間全てが充実している必要はなく、幸せな2時間があればいい。ベストセラーのビジネス書を複数執筆している起業コンサルタントの今井孝さんが説く。「友人との会話でストレスが発散できた」「見た映画が刺激的だった」。一日の中で「最高の2時間」を意識的につくれるかどうかが重要という。

 同じ2時間の使い方が議論を呼んでいる。愛知県豊明市が市議会に提出したスマホ「1日2時間」条例である。仕事や勉強以外での使用は2時間までを目安とするよう全市民に促す内容で、罰則は設けない。小浮正典市長は「睡眠時間や家族との関係を見つめ直す契機になれば」と狙いを話す。

 行政が個人の自由時間に踏み込む是非や2時間の根拠など議論すべき点はあるが、趣旨には大いに賛同する。スマホ漬けの一日が幸せなのか。豊明市民でなくても胸に手を当てたい。

 「幸せ」と「一時的快楽」は混同しやすく、とりわけ人間は退屈な時ほど手早く一時的快楽を得ようとする。今井さんによると、見分けるには「それをしている自分が好きか」を物差しにするといいらしい。スマホで動画を見るより、良書を読んで思索にふける姿の方がかっこいいと思うのだが。

 本稿を書き始めてそろそろ2時間がたつ。話が落ちているかどうかは別にして、きちんと締め切りに間に合っただけに「いい一日だった」と感じたい。(玉)