国会議員の声を取材する「ぶら下がり」はさまざまなパターンがある。事務所前で待ち、車に乗り込むまでにコメントを取るのも一つ。自民党総裁選の日程が決まった8月下旬、車に乗りドアが閉まる間際、石破茂元幹事長(衆院鳥取1区)が言い残したのは「何が起こるか分かりゃせん」▼現状を予期していたとは思えないが、その言葉を反すうしている。総裁選は菅義偉首相の不出馬で一気に混沌(こんとん)とし、立候補見送りの公算が大きかった石破氏も一転前のめりになった▼激震が走った3日は「白紙」を貫きつつも、顔つきやしゃべりは明らかに臨戦態勢に。テレビ局を行脚する姿は1年前と重なるが、率いる派閥は当時より退潮し、明るい材料が増えたわけではない▼党内が菅支持で固まり、告示前に勝負あった前回選で石破氏は「退くも進むも地獄」の判断を迫られた。今回、岸田文雄前政調会長は吹っ切れたように突き進み、河野太郎行政改革担当相は「世論人気」という石破氏のお株を奪う。さらに数人が出る可能性もあり主要派閥の動きにつれ戦局は変わる▼石破氏は永田町内でささやかれる「終わり」という声に「終わったと思わない限り終わらない」と返してきた。ただ今回散れば5戦5敗。仲間も人気もさらに離れかねない。それでも〝終わらないため〟挑戦し続けるだろうか。「遠くないうち」とした判断のヤマ場がすぐそこに迫る。(築)