自民党の細田博之候補と立憲民主党の亀井亜紀子候補による事実上の一騎打ちとなった衆院選島根1区。亀井候補の公式ツイッターに「異変」が起きている。

 24日に陣営スタッフが選挙公報を載せ、投票用紙に名前を漢字で書くよう投稿したところ、アクセス数が瞬く間に70万件を突破。それまでの1日1万~2万件と比べて急激に伸びた。

 注目を集めた理由は同姓同名の候補の出現だ。投票用紙に名前を平仮名で書かれると、2人で1票を分け合う「案分票」として扱われる。このため陣営は公示直前になって届け出名を漢字に改め、ポスターの刷り直し作業に追われた。

 異例の事態に陣営は焦りを募らせたが、終盤戦を前にした大きな反響はうれしい誤算。陣営は演説動画を次々にアップし、浮動票の獲得に照準を合わせる。

 ただ、関心の高まりが支持に直結する確証はない。前回選は選挙区で苦杯をなめ、比例で復活当選した。今も組織力は及ばず、原発に対する立ち位置の違いから、選挙戦を支える労働組合の動きに温度差もある。

 報道各社の世論調査では有権者の3割以上が投票態度を明らかにしておらず、陣営は最終盤に数百人規模の街頭演説を計画。選対事務局長の角智子県議は「ネットの反応の良さが実際の投票行動に結び付いてほしい」と望みを託す。

 対する細田候補の陣営は得票率目標を前回選実績より3ポイント高い62%に定め、組織を引き締める。

 党最大派閥を率いる細田候補は官房長官や党幹事長といった要職を歴任。永田町では次期衆院議長の最有力候補と目される。県内から衆院議長が誕生すれば故桜内義雄氏以来、約30年ぶりとなるだけに、街頭演説でマイクを握った雲南市議は「議長就任に向けて圧勝を」と声を張り上げる。

 懸念は自公政権への逆風だ。24日投開票の参院静岡選挙区補欠選挙は、自民党候補が敗北。岸田文雄首相が2度も現地入りしながら野党系候補に負けた「静岡ショック」の余波が及ぶ恐れはある。

 得票数は12万5401票だった2005年の衆院選以降、右肩下がり。17年の前回選は9万5513票となり、集票力の陰りは否めない。遊説先では支持者から「高齢で激務に耐えられるのか」と体調面を気遣う声も相次ぐ。

 報道各社の世論調査でリードとの情報が流れる中、選対本部長の細田重雄県議は「緩みが最大の敵だ」と強調。有権者数の多い松江、安来両市での支持固めに徹する。

 無所属の亀井彰子候補は松江市内で個人演説会を開き、女性の社会進出の必要性などを訴えている。

 

<島根1区・立候補者>

亀井亜紀子56 立民前(1)

細田 博之77 自民前(10)

亀井 彰子64 無所属新

 (届け出順、敬称略、カッコ内数字は当選回数)

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 衆院選は31日の投開票に向け、終盤戦に入った。山陰両県の4選挙区は、自民党候補がこのままリードを保つのか、立憲民主党、共産党の野党候補が巻き返すのか。各選挙区の情勢や各陣営の戦略を追った。 (取材班)