今年のノーベル物理学賞に決まった真鍋淑郎さんが気候変動予測の研究を始めたのは1950年代末だった。半世紀以上も前のことで、鋭い先見性に驚かされる▼庶民感覚で言うと、記憶をたどれる当時も環境への関心はそれほど高くはなかったはずだ。ちょうど30年前の91年、環境保護を訴える漫画を描き上げ、直後に亡くなった一人の少女の思いにあらためて目を向けたい。出雲市斐川町の小学6年だった坪田愛華さん。その漫画を基にしたミュージカル『あいと地球と競売人』が2年ぶりに上演される▼メッセージを紡いできた舞台も昨年はコロナで中止に。今年こそはと動きだしたが、感染下で参加控えがあり、キャストはこれまでの3分の1しか集まらなかった。6月下旬に始まった稽古は消毒や換気を徹底。感染者を出してはならない、出れば終わる―。関係者はさぞかし神経をすり減らしてきたに違いない▼子どもたちはといえば、マスクをして表情が見えず声も出しにくい。自分の殻を破れなかったり、うまく表現できなかったり、悔しさや不安で涙することも。その度に励まし合い、愛華さんの思いをもっと知ろうと台本をめくり直した。そして次の日また笑顔で稽古に向かう。だって楽しいからと▼待ちに待った本番は20、21、23日に松江市のメテオプラザで。環境活動家の批判やデモの怒りとは違う、胸に響く感動がきっとある。(史)