パワーリフティングの選手で「ヘルストロングジム」のトレーナーを務める小林大雅さん
パワーリフティングの選手で「ヘルストロングジム」のトレーナーを務める小林大雅さん

 持ち上げたバーベルの重さを競う「パワーリフティング」の現役選手が経営するトレーニングジムが出雲市内にオープンした。代表の小林大雅さん(23)は各地の大会で上位に入賞する実力者で、運動方法を指導するトレーナーの資格を持つ。現役選手の指導を受けることができるジムは島根県内では珍しいという。小林さんに、ジム開設の経緯や独自の指導法を聞いた。(Sデジ編集部・吉野仁士)

 ▼ダイエットから「100キロ上げたい」人まで

 ジムの名前は「ヘルストロングジム」(出雲市姫原3丁目)で、11月7日にオープンした。

 パワーリフティングは3種目で重りの付いたバーベルを持ち上げ、最大重量の総計を競う。種目は、直立したままバーベルを首の後ろに担ぎ、膝を屈伸させるスクワット▽ベンチにあおむけに寝た状態でバーベルを押し上げるベンチプレス▽両腕を伸ばしたまま、床に置いたバーベルを背中の力で持ち上げるデッドリフトーの3つ。

 小林さんは10月、和歌山県で開かれた大会で、計515キロ(スクワット180キロ、ベンチプレス120キロ、デッドリフト215キロ)の記録で3位。9月の広島県のベンチプレスの大会では2位に入った実績を持つ。

和歌山県のパワーリフティング大会で3位になった小林さん(小林さん提供)

 指導者としては、全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会(NESTA)認定パーソナルトレーナーの資格を持つ。体の構造や食べ物の栄養成分に関する知識と、指導能力を兼ね備えた人を認定する国際資格で、現在、認定トレーナーは80カ国で活躍するという。

 ジムの名前は健康(ヘルス)と筋肉の増強(ストロング)から考えて付けた。現役選手の指導と聞くと、大会レベルを目指す厳しいトレーニングを想像するが、ダイエットや姿勢改善のために気軽に通う人も大歓迎という。

 小林さんは「少し痩せたいという女性から、バーベル100キロを上げたいという男性まで、目的に合わせて幅広く指導できる」とし、ジム名にかけて「断じて地獄(ヘル)並みに厳しいという意味ではない」と笑って付け加えた。

ヘルストロングジムの外観。住宅街の中に立地する

 

 ▼開設のきっかけは家族の存在

 雲南市出身の小林さんは関西の大学を卒業し、6月まで出雲市内の企業でエンジニアとして勤務していた。会社を辞め、ジムの開設を決めた理由には、健康に悩まされた家族の存在があったという。

 小林さんは大学生だった2019年、母親をがんで亡くした。祖母は膝が悪く、手術を繰り返している。病気や体調不良に悩む家族を見守って「体の健康は何よりも大事だ」と思うようになった。

 大学生時代はボート部に所属し、トレーニングのためにトレーナーがいる本格的なジムに初めて通った。仲間とトレーニングに打ち込み、練習した分だけ筋肉が付き、ボートを漕ぐタイムが縮まる。やればやるほど結果が出るという純粋な楽しさに、のめり込んだ。

 卒業後、大学の教授に薦められエンジニアとして就職したが、机に向かって作業するよりも人と関わることが好きな小林さんは「あまり向いていなかった」と振り返る。人と関わる仕事について思いを巡らした時、自分がトレーニングに目覚めるきっかけになった、ジムのトレーナーを思い付いた。

トレーニングの楽しさを語る小林大雅さん

 ▼選手が教える利点

 会社を退職後、パワーリフティングのインターネット上のコミュニティに参加。トレーニングに関する知識を深めるとともに、各地のトレーナーに助言をもらった。コミュニティを縁に、研修として名古屋市のジムで1週間、トレーナーを体験。指導のイメージをつかんだという。

 選手兼トレーナーの指導する利点は二つあるという。一つ目は経験に基づいた指導が多くできること。小林さんは以前、デスクワーク中心の職業だったこともあり、猫背に悩んだ。大会に出場するためにトレーニングを重ねたり、指導者の勉強をしたりし、解剖学や栄養学の知識を付けたことで解決した。同様の悩みを持つ利用者に対し、生活習慣が筋肉の構造にもたらす影響について、経験と知識に基づいた指導ができる。

 二つ目はトレーニングがどれだけ有効かを自分の体で試せる点。自分が取り組んだ上で「成果が薄い」「負担の方が大きい」「楽しくない」と思ったトレーニングは取り入れない。ジムのモットーは「安全に楽しく、ちょっと限界を超える」。小林さんは「お客さんに絶対に成果が出るトレーニングだけを提供する」と力を込める。

 主な設備はバーベルとプレート(重り)、ダンベルといった細かな器具の他に、ベンチプレスなどができるフリーウェイト用のラック一種類。多くのジムにあるような、一つの部位を徹底的に鍛える大型の器具はあえて置いていない。

 理由について、小林さんは「固定された動きをさせる器具が多く、器具に合わせた機械的な動きになってしまう。ラックでのトレーニングならば動きに幅があり、微調整のために同時に細かい筋肉が鍛えられて効率的だ」とする。例えばトレーニングに慣れていない人がベンチプレスでバーベルを持ち上げる際、重さでバーベルが前後に傾くことがある。小林さんに傾きを指摘され、修正しようと力を込めることで、単純に持ち上げるだけではあまり使わない筋肉も鍛えられる。バーベルを担いで膝を屈伸させるスクワットでも、フラフラしないように安定した姿勢を維持するため、細かい筋肉を使って支えようとする。「機械的な器具を使うと良くも悪くも安定しているため、決まった筋肉だけが鍛えられる」と強調する。

ジム内に設置されたラック。スクワットやベンチプレスで使用する
 

 オープンの告知は折り込みチラシや口コミだったが、開設から2週間で10人が訪れたと言い、需要を感じている。将来は県内出身のパワーリフティング選手を増やすほか、自身が大会審判の資格を取り、県内でパワーリフティングの大会を開く構想も温めるという。

 来年3月には県内で2年ぶりのパワーリフティング大会が開催されるため、指導と並行して自身の鍛錬にも励む。「最初は『トレーニングはきついもの』という認識があるかもしれないが、継続すれば楽しくなる」と笑顔で話した。
 

 ヘルストロングジムの営業時間は午前10時~午後10時(不定休)で、カウンセリングのみ(20分)と施設見学は無料。

 料金はダイエットや筋肉増強といった目的によってコース料金が異なる。健康維持や姿勢の改善、足や腕の筋肉に張りがほしい場合は「カラダ作りコース」で、年齢や性別にかかわらず週2回(1回60分)の指導で月4万2千円。2カ月利用の場合は7万6千円になる。

 女性が利用する際は通常より軽いバーベルを使用する。例えば、ダイエットがしたい女性に向けては体の基礎代謝を上げるため、足や背中といった大きい筋肉のトレーニングや、尻の筋肉を鍛えるヒップアップのトレーニングを指導する。パワーリフティングに興味があり、バーベル100キロを上げたいといった本格的なトレーニングを希望する人には「BIG3強化コース」を薦める。単発指導で1回60分6千円。

 ジム貸しも対応し、120分(固定)500円で最大2人まで利用できる。問い合わせ先は080(2892)2432。