新型コロナウイルスの感染防止対策として、在宅勤務を採用する職場が増えた。「思うように仕事が進まない」「生活にメリハリがつかない」と、悩みを抱える人も多いようだ。自宅で効率よく仕事を進めるポイントは何か。キャリアコンサルタントの経験を持ち、現在は島根大学(松江市西津田町)で授業や学生のキャリアカウンセリングを担当する丸山実子准教授(45)に話を聞いた。(Sデジ編集部・宍道香穂)

▷ポイント① タイマーを活用する
仕事を効率よく進めるポイントの一つ目は、タイマーやアラームを活用して時間を区切ること。「タイマーが鳴るまでに、ここまで終わらせる」と、自分で制限時間を設けることで、だらだらと仕事を続けることなく、業務に集中することができる。
個人差はあるものの、集中力が続く時間は20~30分間が目安といい、時間に区切りをつけながら仕事に取り組むことで集中力を保ちやすくなる。丸山准教授は仕事をする時、タイマーを25分に設定していると言う。
【丸山准教授のアドバイス】
「音が鳴ることで時間の経過に気づくことができ、思いのほかあっという間だと感じる」
在宅勤務だけでなく、会社で仕事をする場合でも有効な方法だと感じた。

タイマーやスマートフォンのアラーム機能を活用すると、集中力を保ちやすくなる。
▷ポイント② 身だしなみを整える
一日中自宅で過ごすとなると、つい部屋着のままで仕事に取りかかってしまう人もいるのではないか。
【丸山准教授のアドバイス】
「職場に行く時と同じように、身だしなみを整える」
身だしなみと気持ちは連動していて、職場にいる時と同じ服装や髪型をすることで、自然と気分を「仕事モード」に切り替えることができるという。逆に、仕事が終わったらジャケットを脱いだり、部屋着に着替えたりすることで気持ちが「リラックスモード」に切り替わりやすい。
仕事に取りかかっても気分がシャキッとしない、仕事が終わってもリラックスできない、と悩んでいる人は、服装を変えることで気分が切り替えやすくなりそう。
▷ポイント③ 軽い運動を取り入れる
三つ目のポイントは、仕事の合間に軽く体を動かすこと。在宅勤務では行動範囲が狭くなり、運動不足になりがち。
【丸山准教授のアドバイス】
「トイレに行ったついでに屈伸やスクワットなど軽い運動をすると、気分がすっきりとして仕事に集中しやすくなる」
長時間同じ場所に座り続けていると水分補給がおろそかになりやすく、意識して水分を取ることも大切という。水分を取ると自然とトイレに行く回数が増え、体を動かす機会作りにつながる。休憩時間に外に出て散歩するのもお薦めという。一つ目の「タイマー活用」と同じく、職場で仕事をする際にも取り入れたい習慣だ。
▷ポイント④ オンラインならではのコミュニケーション方法を意識する
上司や先輩と直接会って話すことができないと「きちんとコミュニケーションを取れているか不安」「言いたいことが伝わっていないかも」と悩む人も多いだろう。
【丸山准教授のアドバイス】
「対面で行う仕事とテレワークは全くの別物だと意識する」
リモートワークならではのコミュニケーション方法を意識することで、オンラインでの会議や業務連絡が円滑に進むと言う。

例えばオンライン会議に参加する場合、相手の発言に対して大きくうなずく、リアクションボタンやチャット機能を活用するなど、対面での会議よりも大きく反応を示すと、お互いに「伝わっているだろうか」と不安にならずに済む。
参加者だけでなく主催者側も、こまめにリアクションを求める、伝わっているか確認するなど、対面での会議よりも丁寧にコミュニケーションを取ると良い。
「聞こえますか」「見えますか」「資料はここから開いてください」など、こまめに状況を確認し合うことで、オンライン会議を円滑に進めやすくなる。
丸山准教授は「聞きすぎかな?と思うくらい、こまめに確認して良い」と助言した。「リアルとオンラインは違う」と意識し、より丁寧にコミュニケーションを取ることが、不安の解消につながる。

▷状況をポジティブに捉えることが大切
丸山准教授によると、リモートワークに苦手意識を持つ理由として「上司や先輩の指導を受けられない不安」「パフォーマンスが低下しているのではという不安」「人と会話ができないことによる寂しさ」などが挙げられる。
【丸山准教授のアドバイス】
「考え方を変えて、状況をポジティブに捉える」
「家にいてもしっかりしなければ」という意識が強い人や、人と話すことが好きな人は、在宅勤務に苦手意識を持ちやすいという。
丸山准教授は「自分で環境を変えられる日と捉えると良い。机にお気に入りのタンブラーやキャラクターグッズを置いて気分を明るくしたり、散歩に出かけて外の空気を吸ったりと、リフレッシュするのがお薦め」と助言した。
「つらい」「いつまで続くのか」と、状況を悲観的に捉えるのではなく「いつかは終わる」「こんな働き方もあるのだな」「新しい経験ができた」と、ポジティブに捉えるよう心掛けたい。

▷余暇を充実させることも大切
通勤時間がなくなったことで、自由に使える時間が増えた人も多いのではないか。新型コロナウイルス収束後も多くの職場で働き方が変化し、余暇の時間が増えることが予測される。「自由な時間をどう過ごすか」を考えることが重要だと丸山准教授は話す。
丸山准教授は「余暇の時間があるからこそ、仕事を頑張ることができる」とし、余暇の時間を充実させることは、仕事のパフォーマンスにも良い影響を与えると説明した。
【丸山准教授のアドバイス】
「まずは“余暇の時間が増えた”と認識することが大切。増えた自由時間を自分なりに有効活用する。余暇を充実させることで、仕事でのパフォーマンスも向上させやすくなる」
仕事が終わったらなんとなく食事を取り、なんとなく寝るといった過ごし方よりも、手間暇をかけた料理を作ってみる、温泉につかるなど、よりリフレッシュできる「お楽しみ時間」を持つのがお薦めという。
最近は有名シェフが動画投稿サイトに投稿したレシピ動画などもあり、手軽に一流の料理をまねることもできる。名産品を通販で手に入れる「おとりよせ」で、各地のおいしいものを味わうのもお薦めという。
読んだことのない本を読んだり、動画投稿サイトで著名人の講演を聞いたりすれば、自宅にいながら新しい考え方に触れることもできる。

【丸山准教授のアドバイス】
「日常の中で“自分へのご褒美”を意識することが大切」
平日の夜は時間がないからと諦めず、余暇の時間を充実させたい。
「自分にご褒美をあげるなんて、ぜいたくだ」と考える人もいるが、丸山准教授は「いけないことだと思う必要はない」と呼び掛ける。40~50代の「ミドル世代」と呼ばれる年代の人は特に、家庭や職場など、それぞれの場所での役割を演じなければならず、知らず知らずのうちにストレスを抱え込む傾向がある。意識して積極的にリフレッシュする時間を作ると良いという。
余暇の時間の過ごし方や、仕事に集中する方法、息抜きの仕方を考え工夫することは、リモートワークに限らず、いきいきと仕事をする上で大切なポイントだと感じた。