「灯台下暗し」ということわざは、自然災害にも当てはまる。そう実感したのが2007年7月の新潟県中越沖地震だった。最大震度6強の激震により、東京電力柏崎刈羽原発3号機(新潟県柏崎市、刈羽村)の変圧器から火災が発生。黒煙が上がる生中継の映像に衝撃を受けた▼その50日後、現地を取材して別の衝撃を受けた。発生時は広く停電しており、避難していた地元住民の多くが原発で火災が起きていたことを知らなかった。放射能漏れがあったらどうなっていたか。まさに灯台下暗しだ▼こちらで暗かったのは灯台の「下」だけではなかった。宮城、福島両県で最大震度6強を観測した16日深夜の地震。両県を含む東北地方に加え、遠く離れた首都圏など東電管内でも約210万戸が停電し、交差点の信号も消え、真っ暗な都心を中継しているニュースもあった▼電力の需給バランスを保つため、強制的に停電させる仕組みが作動したのが原因。結果的に、もっと大規模な停電を防ぐ役割を果たしたのだが、突然の暗闇に不安を抱いた人も多かっただろう▼専門家によると、地震による夜の停電に備えるには、枕元にスマートフォンを置くのがいいという。たとえほのかな明かりでも安心感を与えてくれるし、災害の情報収集にも役立つ。そのためには常に充電しておく習慣も欠かせない。いざという際に役立つ「灯台」を確保しておきたい。(健)