未曽有の被害が出た「あの日」の恐怖を思い出した人もいただろう。東日本大震災から11年が過ぎたばかりの16日深夜、3度の緊急地震速報が出て、宮城、福島両県を最大震度6強の強い揺れが襲った。震源は福島沖で、震源の深さは57キロ。一時は津波注意報も出たが、大事に至らず約5時間後に解除された▼この地震のため東北新幹線では下りのやまびこ223号が福島-白石蔵王(宮城県)間で脱線。福島第1、第2と女川原発では使用済み核燃料プールの冷却が一時停止し、ひやりとさせた。東北や首都圏での深夜の停電は、最大約220万戸に達した▼一夜明けて伝えられる被害状況によると、人的被害は17日夕の段階で死者を含めて180人超。宮城県の東北自動車道では路面に数十メートルの亀裂が入り、東北新幹線では橋脚の損傷なども確認された。家屋などへの詳しい被害状況が明らかになるのはこれからだが、全面復旧には時間がかかりそうだ▼両県は昨年2月の深夜にも震度6強の地震に見舞われた。気象庁によると、国内での震度6強以上の地震は東日本大震災以降、既に10回を超え年に1回の割になる▼昔から「地震、雷、火事、親爺(おやじ)」というのは、いずれも「一過性の怖さ」だからとされるが、こう頻繁では、地震もコロナ禍も「一過性」と言っておられない。地震列島で暮らす限りは「備えあれば憂いなし」と、改めて肝に銘じたい。(己)