紀元前3世紀、中国・秦の〓(亡の下に口、下に月女迅のツクリを横に並べる)政(えいせい)(後の始皇帝)が成した国家統一を描いた原泰久さんの漫画『キングダム』(集英社)。法家の李斯(りし)が、〓(亡の下に口、下に月女迅のツクリを横に並べる)政の側近に対し「そもそも〝法〟とは何だ?言ってみろ」と問いただす場面がある▼「刑罰をもって人を律し、治めるためのもの」との答えに、李斯は刑罰は手段に過ぎず法の正体ではないとし、こう断言する。「〝法〟とは願い!国家がその国民に望む人間の在り方の理想を形にしたものだ!」▼このやりとりが史実かどうかはさておき、法の本質を突いた名言と評価する声は少なくない。日本で言うならば、憲法前文がこれに当たるだろうか。国民主権、平和主義や基本的人権を盛り込んだ643字。「日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ」とある▼憲法改正の是非を議論するに当たり、「国家ビジョン」の整理と国民の合意形成がまず肝要だと感じる▼この世界で日本人だけが平和を享受し、安らかに生きていくことは不可能。憲法前文にも「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」とある。では平和を愛する諸国民とは、どこの誰で信頼できるものなのか。ウクライナに攻め入る今のロシアは当てはまらないだろう。日本人の在り方を考える前に、前提となる国際関係、地球環境を見つめ直す必要がある。(万)