使う時季で悩むのが「五月(さつき)晴れ」という表現。本来は旧暦の5月、つまり新暦ではほぼ1カ月後になる今頃からの梅雨の合間の晴れのことを言うが、今では新暦5月の晴天の意味でも使われ、辞書にも載っている。ただ、その場合は「ごがつばれ」とわざわざ読み方を変える人もいる▼旧暦の5月が梅雨の時季に当たることから生まれた言葉はまだある。梅雨の長雨や梅雨の異称として使う「五月雨(さみだれ)」がそう。梅雨時は夜が暗いことや、その暗闇を「五月闇(さつきやみ)」という。「五月蠅(うるさ)い」と書くのも梅雨はハエの動きが活発になるからとされる▼うっかり使ってしまいそうなのが「爽やかな五月晴れになったこどもの日の5日-」という表現。「五月晴れ」を使う時期の是非に加え、俳句の世界では「爽やか」は秋の季語になるらしい。誤用とは言えないまでも、使う相手によっては、このケースでは初夏の季語の「清々(すがすが)しい」などに言い換えた方が無難だそうだ▼さて暦の上では、ちょうど今日が「入梅」。平年よりやや遅くなっているものの、山陰地方の梅雨入りも、もうそろそろ。ジメジメした、うっとうしい日々が待ち構える▼しかし、ものは考えようだ。梅雨があるから、その合間の晴れがうれしく「五月晴れ」の言葉として残ったのだろう。今年も大雨への備えを忘れずに、つかの間の晴れを有効に使いながら本格的な青空の到来を待とう。(己)