有識者会議から部活動の地域移行に関する提言を受け取ったスポーツ庁の室伏広治長官=6日、文部科学省
有識者会議から部活動の地域移行に関する提言を受け取ったスポーツ庁の室伏広治長官=6日、文部科学省

 小学校PTAの役員だった10年ほど前、「放課後子ども教室」を学校に開くため、地域住民に協力をお願いして歩いたことがある。ボランティアの大人と過ごす「子どもの居場所」の一つで、文部科学省の方針に基づき、教育委員会が各校区で開設を促していた▼趣旨は良かったが、担い手の確保には苦労した。農村のためそもそも人が少なく、当てにした高齢者層は田んぼや畑に忙しい。既に登下校の見守りに携わってもらっている人たちには、さらなる協力は頼みにくい。結局、保護者主体で運営することになった▼公立中学校の運動部活動の地域移行をスポーツ庁が打ち出したと知って、そんな過去を思い出した。少子化で生徒数が減り学校単位ではチームをつくれないところがあり、先生は多忙を極める。地域のスポーツクラブや民間事業者に部活動を見てもらうことで解決する構想。市部はともかく、郡部ではどれほどの受け皿が整えられるか心配だ▼国の事業で「地域」とうたわれるたびに、人口の多い首都圏が生活基盤の職員で構成する中央省庁は、地域をどう捉えているのだろうと思う。縦割りの省庁、事業それぞれに対応する地域があるわけではないのだ▼「地域で子どもを育む」という理念は尊く、あるべき姿だが、その美名の下に国や自治体が金を惜しみ、実体があいまいな「地域」や住民の善意に頼りすぎると次世代育成を誤る。(輔)