竜宮から届いた玉手箱には命の謎に迫る〝お宝〟が詰まっていた-。探査機はやぶさ2が2020年に小惑星りゅうぐうから持ち帰った砂試料から、うま味成分として知られるグルタミン酸など「生命の源」とされるアミノ酸23種類が見つかった。宇宙航空研究開発機構(JAXA)と岡山大などの研究チームが学術誌「日本学士院紀要」に発表した▼これまで地球外の天体にもアミノ酸はあると推定されていたが、多種類が存在することを直接確かめた例はなかった。小惑星内部にアミノ酸が存在することが証明されたことで、「宇宙から地球にアミノ酸が到来した可能性が高まった」(横浜国立大・小林憲正名誉教授)という▼岡山大の中村栄三特任教授は「生命の起源と直接結びつくとまでは言えないが、生命の起源に関する議論の基盤となり得るだろう」としている。太陽系や地球の生命起源についての研究がさらに進みそうで、胸躍る発見だ▼太陽系の誕生は約46億年前。地球に生命が誕生したのが38億年前とされる。その8億年の間に何が起きたのか。おとぎ話では玉手箱を開けた浦島太郎が一気に年を取ってしまうが、今度の玉手箱は、開くと地球の生命起源の手掛かりが出てきた▼それにしても気が遠くなるほどの年月がたっている。今まで人類は進歩してきたのか。今の地球は宇宙の歩みに対して、とてもじゃないが胸を張っていられない。(富)