新型コロナウイルスの感染拡大が収束しない中、災害時に感染者が避難する際の対応があらためて課題になっている。島根県では今も自宅療養者が3100人に上り、避難行動や避難所の運営を想定通りコントロールできるかどうか不透明なためだ。秋の台風シーズンに入って災害リスクは増しており、各市町村はコロナ対策との両立に苦慮している。
(勝部浩文)
災害時の自宅療養者の避難を巡っては、各保健所と市町村が決めた専用の避難先に向かうよう、島根県が今年3月に作成したマニュアルで定めている。
自宅療養者が900人前後いるとみられる松江市の場合は、県と共同運営する松江保健所があらかじめチラシを配布。避難が必要になった自宅療養者は一般の指定避難所に向かうのではなく、市に問い合わせの電話を入れた上で案内に従い、専用避難先に向かうといった手順をとる。
ただ、専用避難先は1カ所。居住地によっては移動に時間がかかる上に収容人数にも限りがあり、避難対象者が増えるほど運用が難しくなる懸念が高まる。市健康福祉部の岸本和之次長は「一定の想定はしている」とする一方、高齢者等避難や避難指示を出す状況になった場合に「どの程度の人数の自宅療養者が避難してくるかは読み切れない」と話す。
実際、8日に台風11号が最接近し、一部で高潮や暴風被害が出た隠岐の島町は、自主避難用として町総合体育館内をゾーニングして専用避難先を設けたが、避難した自宅療養者はいなかった。
一方、全数把握をやめた鳥取県も自宅療養者は大勢いるとみられる。県は市町村に対し、導線を分けるなど隔絶した場所を設けるよう求め、状況によっては自宅療養者向けに県の宿泊療養施設を活用する。
避難の調整は、各保健所のほか把握していない感染者に対応する「陽性者コンタクトセンター」が担う。鳥取県危機管理政策課の森岡潤一課長補佐は「緊急時は身の安全確保を最優先に行動してほしい。住んでいる地域の危険箇所をハザードマップで確認するなど事前の備えをしてほしい」と呼びかけた。