後鳥羽上皇が中ノ島(海士町)に来島して800年を記念し、上演された島民劇=3月6日、島根県海士町海士の隠岐神社
後鳥羽上皇が中ノ島(海士町)に来島して800年を記念し、上演された島民劇=3月6日、島根県海士町海士の隠岐神社

 NHKの大河ドラマ『鎌倉殿の13人』が大詰めを迎えている。鎌倉と京、公武の権力がぶつかり合う承久の乱(1221年)が、どう描かれるのか注目だ▼三谷幸喜さんが6年前に脚本を手がけた大河ドラマ『真田丸』では、天下分け目といわれた関ケ原の戦い(1600年)がドラマ上ではわずか1分弱の扱いとなるなど、大胆な展開が話題になった。承久の乱は、後鳥羽上皇の配流地として縁がある島根県に住む者にとって最大の見どころ。じっくり見せてくれることを期待している▼ただ今回のドラマは、武家の地位を確固たるものにした鎌倉の視点から描いた作品だけに、ドラマの放映を機会に、公家の視点からも理解を深めたい。戦いの後に19年もの時を過ごした後鳥羽上皇を「ごとばんさん」として親しむ海士町を訪ねない手はない▼『敗者の日本史 承久の乱と後鳥羽院』(吉川弘文館)を著した関幸彦氏は「隠岐院として自らの生涯を過ごすことで、その文芸・文化至上主義は流謫(るたく)の王権として純化される形で培養されることになる」と指摘した。優れた和歌を残して、作刀の才を見せた後鳥羽上皇は、文化史の面で言えば敗者ではなかった▼近年、朝の連続テレビ小説の本編放送が終わった後、脇役がサイドストーリーを演じるスピンオフ作品がよく放映される。後鳥羽上皇を主役としたもう一つの中世史も取り上げてもらえないだろうか。(万)