米ミサイル駆逐艦から発射された、巡航ミサイル「トマホーク」=2011年3月(米海軍提供・ゲッティ=共同)
米ミサイル駆逐艦から発射された、巡航ミサイル「トマホーク」=2011年3月(米海軍提供・ゲッティ=共同)

 ニュースに出てくる数字にこだわってみると、違った景色や問題点が見えてくる。例えば物価高騰対策として昨秋、政府が決めた所得が少ない世帯への5万円給付。対象になった住民税非課税世帯は全国約1600万世帯と伝えられた▼この数を2020年時点で全体の25%を占める「夫婦と子ども」のいる世帯数約1400万と比べると、その数よりも多いことに驚く。「夫婦と子ども」というかつての標準的な家庭が減っていく一方で、住民税非課税の世帯が増えていないか気になる▼もう一つ、政府が反撃能力(敵基地攻撃能力)保有のため購入を決めた米国製巡航ミサイル「トマホーク」にも疑問な点がある。このミサイルの巡航速度は時速約880キロとされる。千キロ飛ばすには1時間以上かかる。一方、北朝鮮の弾道ミサイルは10分前後で日本に届く▼これまでの説明では、相手が攻撃に着手した段階での反撃も可能だという。しかし仮に千数百キロ先の基地を狙うには、2時間近く前に発射しないと相手の発射を阻むのは不可能。それまでに相手の標的はどこか、さらに実験や訓練との区別、弾頭の中身が本物かどうかまで判別できるかどうか▼トマホークを持つことで北朝鮮や中国が狙い通りにひるめばいいが、そうでなければ国際法違反のリスクがある事実上の先制攻撃や、ミサイルの撃ち合いにつながる「危ない買い物」になりかねない。(己)