横浜商科大名誉教授の羽田耕治氏
横浜商科大名誉教授の羽田耕治氏

コロナ後の地域観光
~石見の魅力をどう生かすか~

地域資源にストーリーを

 山陰中央新報社の石西政経懇話会、石見政経懇話会の定例会が16、17日、益田、浜田各市であった。横浜商科大名誉教授の羽田耕治氏(71)が「コロナ後の地域観光~石見の魅力をどう生かすか~」と題して講演した。食や自然など石見ならではの地域資源をストーリー性を持たせながら訴求力を高める重要性を説いた。要旨を紹介する。

 人口減少で、国内観光需要の減少は避けられず、地域間の競争はますます激化する。重要になるのが的確なマーケティングだ。

 観光の目的は2タイプある。景観や歴史文化のスポットを巡り学ぶ「観る観光」と、スキーや海水浴など体を動かす「レクリエーション」型。観る観光は周遊性があり、魅力度や希少性によって行動範囲が広がる。レクリエーション型は目的地が定まっているため周遊性がなく、近隣からの来訪が多い。

 新型コロナウイルス禍を経て、団体から個人へと旅行形態の変化が加速した。地域資源を前提にターゲットを定め、特性に合った戦略が求められる。島根県はもっと1泊圏、近距離圏を重視すべきだ。リピーターになる可能性が高い。

 コロナ禍で観光業の収益力が低下した。観光消費額の目標設定は総額ではなく、宿泊、飲食、土産品購入、移動など部門ごとに設定すべきだ。より具体的な戦略策定や実効性の向上につながる。

 県の調査で首都圏の住民は食や自然体験、美肌に関連する温泉などを県の魅力と認識しているようだ。関西圏や瀬戸内海地域の住民も同様と考えていい。

 石見地域は、個性的な魅力を磨く必要がある。高津川を活用したアクティビティーや、食の面で調理・提供の場の演出、源氏巻きなど特産品の製造体験といったものを商品化できる。体験型のプランでは、単に受け入れるのではなく、歴史や風土に根付いたストーリー性を強調して紹介すると良い。

(藤本ちあき)