東日本大震災発生の17日前、別の震災があったのを覚えている人は少ないだろう。ニュージーランド南島にあるクライストチャーチ市がマグニチュード6・3の激震に見舞われ、語学研修などで訪れていた日本人28人が犠牲になった。12年前のきょうのこと▼その中に北國新聞(金沢市)の元記者、北川泰大さん=当時(39)=がいた。当方とは、日韓両国政府が主催する記者交流事業で、2008年に一緒に訪韓した間柄。その後、新聞社を退職して語学留学したことを安否不明者を伝える報道で知った▼震災の3年後、犠牲者のために設けられた共同墓地で、遺族を対象とした慰霊祭が開かれた。<志なかばにして この地に眠る>。北川さんの墓碑に、そう記されているという。当時の記事を読み返すと、切なさとともに、訪韓時の思い出がよみがえる▼記者交流に参加したのは、日本海沿岸で新聞を発行する地方紙10社の代表。相互交流を目的とした他社の記者と違い、こちらは竹島を所管する島根県をエリアとする新聞社。韓国側の要人に竹島問題への姿勢をただそうと試みるものの、ことあるごとに「質問はしないでほしい」と制限され、苦労した。そんな当方を応援してくれたのが北川さんだった▼きょうは18回目の島根県の「竹島の日」。回数は増えても、問題解決の糸口は見えない。北川さんの命日に事態の進展を報告できないのが悔しい。(健)













