野球のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)がきょう開幕する。3大会ぶりの世界一を目指す侍ジャパンの戸郷翔征投手(巨人)は、100回目を迎えた2018年夏の甲子園を目指した高校3年生の一人だった▼大会決勝では、東北勢として春夏通じて初の優勝を目指す金足農業(秋田)と、史上初の2度目の春夏連覇が懸かる大阪桐蔭(大阪)が激突。歴代優勝校を倒して勝ち上がった地方の高校とエリート集団との対決が全国の注目を集める中、戸郷投手は出場を果たせなかった▼夏の熱戦から半月ほどたった8月末、戸郷投手はU18(18歳以下)アジア選手権の壮行試合に出場した。日本代表ではなく、宮崎県選抜の一員として。ネット中継を見たが、甲子園で名をはせた選手のバットが空を切る快投に目を見張った。この好投を機に巨人入り。昨季は先発で12勝を挙げた▼対照的に当時のU18メンバーで今回「侍」入りした選手はいない。投打の二刀流で大阪桐蔭を優勝に導き、ドラフト1位で中日に入った根尾昂選手は野手として伸び悩み、昨季投手に転向。厳しいプロの世界を垣間見た▼春は進学、入社と新しい道に進む季節。根尾選手のように違う道で春を迎える人もいるだろう。声援とトランペットの音が選手を後押しするようにどの道であろうと応援してくれる人が必ずいる。選んだ道を信じて挑戦できる春は誰にもやって来る。(目)