近頃よく行く中華料理店で、天津飯を注文した客に店主が申し訳なさそうに言うのを聞いた。「卵の値上がりでボリューム抑えめです」▼無理もなかろう。鳥インフルエンザの感染拡大による供給減少や、ウクライナ侵攻に伴う飼料代の高騰が影響し、鶏卵の卸売価格は過去30年で最高値という。使う量を減らすどころか、提供を休止する動きも。店主は卵抜きの調理を考えているかもしれない▼さて、こちらの卵は惜しむことなく相手チームに届けてもらいたい。見た目の形が似ていることから、米国ではスコアボードに並ぶ「0」を「goose egg(ガチョウの卵)」と言うらしい。今夜はいよいよ野球のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)侍ジャパンの初戦。中国を相手に先発はエンゼルスの大谷翔平選手である。二刀流の打撃も楽しみだが、まずは「0行進」で流れをつかみたい▼米大リーグからは、カブスの鈴木誠也外野手が故障で出場を辞退する想定外もあった。浜田高出身の清水雅治外野守備・走塁コーチはさぞ悩んだことだろう。メニューに欠かせない卵のように、走攻守の要として期待していた鈴木選手抜きでどう戦おうか、と▼大会後、新年度からは故郷浜田市で小中学生らの指導に当たる。代役探しや起用法についてWBCの土産話をぜひ聞かせてほしい。その時、金色に輝くメダルが首にかかっていますように。(史)