『ドン・ウッサ ダイエットだいさくせん!』ほか
『ドン・ウッサ ダイエットだいさくせん!』ほか

 春は入学や進級、就職(しゅうしょく)などで、環境(かんきょう)が変わったり、新たな夢(ゆめ)や希望を持ったりする季節ですね。そこで今回は「変身(へんしん)」をテーマに、本を紹(しょう)介(かい)します。

 1冊(さつ)目の『ドン・ウッサ ダイエットだいさくせん!』(キューライス著(ちょ)、白泉社(はくせんしゃ))は、うさぎの親分ドン・ウッサが、ダイエットに挑戦(ちょうせん)するお話です。スタイル抜群(ばつぐん)の俳優(はいゆう)に憧(あこが)れて、やせてあんなふうになりたいと願うドンの力になりたくて、子分のうさぎたちはいろいろな方法を考えます。

 しかし、子分たちが作ったランニングマシーンが止まらなくなり、ドンが勢(いきお)いよく飛んでいくなど、トラブルが続きます。一度はやせることを諦(あきら)めそうになったドンでしたが…。ドンは理想の自分に変身できたのでしょうか。ドンと子分たちの絆(きずな)に注目しながら読んでほしい一冊(さつ)です。

 2冊目は『お山のライチョウ』(戸塚(とつか)学(がく)・写真・文、偕成社(かいせいしゃ))です。富山県の立山(たてやま)という高山に住む鳥・ライチョウを、20年以上写真に撮(と)り続けている著者の1年間の活動を紹介しています。

 ライチョウは、年に3回、羽が生え変わるそうです。冬は雪山に溶(と)け込(こ)むように真っ白の羽に、夏と秋は、周りの木々や岩に合わせて、目立たない色に変わります。

 この本は、そんな外見の変身とは別にもう一つ、みなさんに知ってほしい変化についても書かれています。それは、地球温暖化(おんだんか)により、ライチョウが絶滅(ぜつめつ)の危機(きき)にあることです。カラスやスズメのように身近な鳥ではありませんが、遠くに住む鳥の暮(く)らしに、私(わたし)たちが悪影響(あくえいきょう)を与(あた)えているという事実を教えてくれる一冊です。

 そして、最後に紹介する本は『生まれかわりのポオ』(森絵都(もりえと)・作、カシワイ絵、金(きん)の星社(ほししゃ))です。猫(ねこ)のポオと母と一緒(いっしょ)に暮(く)らしていた少年・ルイですが、ある日、そのポオが亡(な)くなってしまいます。ポオに会いたいと泣き続けるルイを見て、母が書いたのが『生まれかわりのポオ』という物語でした。

 「げんじつの中で(ポオに)会いたいんだ」と言っていたルイでしたが、何度もいろいろな生き物に生まれ変わるポオのお話に、次第(しだい)に耳を傾(かたむ)け始めます。ポオを失った悲しみとしっかり向き合う自分に成長していくルイを、そっと見守りたくなる一冊です。

 変身=ヒーローを思い浮(う)かべることが多かったのですが、実はもっと身近に起こっている変化なのかもしれないと、気づきを与えてくれた3冊です。

 (古德(ことく)ひとみ・境港(さかいみなと)市民図書館司書)