松江城の外堀・四十間堀川で通勤途中、冬の渡り鳥オオバンがいるのを見掛けた。次の日にはキンクロハジロが4、5羽。盛んに餌をあさっていた。冬の宍道湖、中海に多数飛来し、珍しい鳥ではない。春先には北の国に帰っていくのが普通だ▼ホシザキ野生生物研究所(出雲市)によると、けがなどで繁殖地に帰れない個体以外でも、渡りをせず残る個体がいる。若い個体が多いといい、繁殖せず越夏個体になるのだという。もっとも、渡りが遅いだけで、これから移動する鳥もいる。全体の動きから外れたアウトローといったところか▼渡り鳥ばかりではない。神様にもいささか外れた方がいるという。あまり知られていないが、佐太神社(松江市鹿島町)では、11月に行う神在祭の半年後に、神在裏月祭を5月20日から25日まで行う。25日が神送りの神事だが、居心地が良くて帰らない神様がおられるとか▼その神様を追い立てて、お帰り願う神事が31日の「止神(しわがみ)送り」だ。神職によると、居残りを決め込む神様が何という神様なのか特定されていない。居残る神が毎年違うのか、同じだが特定しない配慮なのか▼出張先が居心地良く、ずるずる居座って帰任しない|。人間社会なら、即「クビ」だが、神様の世界はおおらかだ。ワクチンの予約が取れない、東京五輪は中止を、とギスギスする一方の世の中だが、おおらかに構える精神も必要では。(富)