すやすや眠る赤ちゃんの顔を眺めていると癒やされる。1月末に第3子となる男児を出産した知人を先日訪ねた。お祝いを手渡すと「大変だったんです」という言葉が返ってきた▼出産自体ではない。細心の注意を払っていたものの、予定日前に家族全員が新型コロナウイルスに感染。幸い症状は軽かったが、自宅待機の最終日に陣痛が始まった。通っていた個人病院では対応できず、急きょ指定医療機関の総合病院へ。見ず知らずのスタッフの中で出産した上、赤ちゃんとも3日間隔離されたという▼そんな体験も今後はなくなりそうだ。コロナ感染症法上の位置付けがきょう、5類に引き下げられた。感染者らへの外出自粛要請はなくなり、より広い医療機関で診療が可能になる▼日常生活に制限がなくなるとはいえ、将来を考えると素直に喜ぶ気分になれない。先月、厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所が公表した2070年の日本の将来推計人口は8700万人。少子化が進んで20年時点から3割減少する一方、65歳以上の高齢者は4割を占めるという▼深刻なのが年金や医療などの社会保障。現役世代が高齢者を支える従来型は限界を迎える。経済力に応じて全ての世代で支え合う「全世代型」への転換が待ったなしだ。生まれてきた赤ちゃんが大人になった際、「高齢者のつけを払わされてばかり」と嘆くような社会にはしたくない。(健)