▽立ち止まったときには…
新学期が始まって、2カ月が過(す)ぎました。今年は梅雨(つゆ)入りが例年より早く、季節の移(うつ)ろいにせかされているように感じるのは、私(わたし)だけでしょうか。そんなときに読みたい3冊(さつ)です。
『はなのすきなうし』(マンロー・リーフおはなし、岩波(いわなみ)書店)は、何事にもせかされない牛のフェルジナンドが主人公です。
フェルジナンドが好きなことは、一人、草の上に座(すわ)って静かに花のにおいをかぐことです。山の牧場で暮(く)らしていましたが、ひょんなことから誤(あやま)って、闘牛(とうぎゅう)にと見込(みこ)まれ町に行くことになります。闘牛場に連れ出されたフェルジナンドは、どうしたでしょうか?
この本を読むと、好きなことっていいな。自分の好きなこと、やりたいことって何だったかなと、振(ふ)り返ることができます。
『海のアトリエ』(堀川(ほりかわ)理(り)万子(まこ)・著(ちょ)、偕成社(かいせいしゃ))やりたいことが分からないとき、自分が分からなくなるときは、前に進めず立ち止まります。
この本に出てくる私は、学校に行きにくくなって家にこもりがちでした。夏休みになって、お母さんの友達で、絵描(えか)きさんの海のアトリエに泊(と)まりにいくことになりました。そこで過ごす1週間のお話です。
立ち止まったとき、一人ではなく信頼(しんらい)できる誰(だれ)かがいてくれると心強いですね。相手と向き合いながら、相手を通して自分のことが分かるかもしれません。
『うろおぼえ一家のおかいもの』(出口(でぐち)かずみ・編(へん)、理論社(りろんしゃ))
最後は、これでいい、大丈夫(だいじょうぶ)と思える一家のお話です。
うろおぼえ一家は、なんでもうろおぼえ。今日は、お母さんの欲(ほ)しかったものを買いに行く日なのですが、何が欲しかったのかうろおぼえです。分からなくなっては、立ち止まり、まわりの人に聞きながら進みます。
さて、欲しかったものにたどりつけるのでしょうか。うろおぼえって困(こま)りそうですよね。でも、この一家は何不自由なく幸せに暮らしています。
何かにせき立てられるとき、自分が分からなくなったとき、立ち止まって本を開くと、次の一歩の力がたくわえられるように感じられます。
(景山(かげやま)民子(たみこ)・雲南(うんなん)市立大東(だいとう)図書館司書)