『あめが ふるとき ちょうちょうは どこへ』ほか
『あめが ふるとき ちょうちょうは どこへ』ほか

 今日6月11日は、暦(こよみ)の上では「入梅(にゅうばい)」といって、梅雨(つゆ)の季節に入る日とされています。そこで、今日は「雨を楽しむ」をテーマに本を紹介(しょうかい)します。

 『あめが ふるとき ちょうちょうは どこへ』(メイ・ゲアリック文、岡部(おかべ)うた子・訳(やく)、金(きん)の星社(ほししゃ))は、こんなふうに始まります。

 〝あめ、あめ、あめ、あめ。あめが ふるとき、ちょうちょうは、どこへ いくのかしら。〟

 そして、もぐら、みつばち、ことり、ねこ…。雨が降(ふ)るときの動物たちの様子が描(えが)かれています。青、緑、白、灰(はい)色が混(ま)ざったような色も、優(やさ)しい言葉も、静かな雨の日にぴったりの絵本です。ちょうちょうがどこへ行くのかは、最後まで謎(なぞ)のまま。想像(そうぞう)して、そして調べてみてくださいね。

 『雨、あめ』(ピーター・スピアー作、評論社(ひょうろんしゃ))は文字のない絵本です。外で遊んでいた二人の姉弟は、雨が降り出すと、家の中に入り、レインコートを着て、長靴(ながぐつ)をはき、傘(かさ)をさして、また外へ遊びに出かけます。

 逆(さか)さにした傘の中に雨水をためたり、しずくがきらきら光るクモの巣を見たり、ぬれるのもかまわず雨の日を楽しみます。絵を見ながら想像してみてください。

 レインコートや傘が雨をはじく音、湿(しめ)った土の匂(にお)い、長靴の中に水が入る感じなど、文字で説明されていないからこそ、自分で想像を膨(ふく)らませて楽しめます。

 ときには、この絵本の二人のように思いっきり雨にぬれるのもいいけれど、雨にぬれない魔法(まほう)があったらいいなと思いませんか。

 『しずくの首飾(くびかざ)り』(ジョーン・エイキン作、猪熊(いのくま)葉子(ようこ)・訳、岩波(いわなみ)書店)に出てくるローラは、生まれたばかりの頃(ころ)、北風から三つの雨つぶがついた首飾りをもらいます。それは、首にかけていると雨にぬれない、不思議な首飾りでした。

 誕生日(たんじょうび)がくるたびに、北風は雨つぶをくれ、そのたびにローラの不思議な力も増(ふ)えていきます。雨つぶが九つになったときには、ローラが手をたたくと雨がやむようになりました。

 北風に「けっしてはずしてはならん。」と言われた首飾りでしたが、ローラをうらやましく思った友達の意地悪で、なくなってしまいます。どうなっていくのか、この先も驚(おどろ)くような魔法が出てきます。

 この本には「空のかけらをいれてやいたパイ」、「三人の旅人たち」、「パン屋のネコ」、「魔法のかけぶとん」など、全部で8編(ぺん)の物語が入っています。どれも不思議な魔法の世界に連れていってくれて、雨の日でも心が晴れやかになるでしょう。

(倉橋千絵(くらはしちえ)・島根県立図書館司書)