西日本豪雨から5年となるのを前に、広島県坂町で行われた追悼式=2日午前
西日本豪雨から5年となるのを前に、広島県坂町で行われた追悼式=2日午前

 その地を訪れた時、なぜここが大きな被害に遭ったのかが、にわかには理解できなかった。5年前の西日本豪雨で死者20人(災害関連死を含む)、行方不明者1人を出した広島県坂町。広島、呉両市を結ぶ湾岸道路・国道31号沿いにある▼豪雨時、報道を含めて世間の関心が集中したのが、大規模な土石流が発生し、町の犠牲者の大半を占めた小屋浦地区だった。その5キロほど広島市寄りの坂地区を、災害から約1カ月後に訪ねた。家屋からの泥出し作業を手伝うためだ。役場がある町の中心部で、町中を流れていたのは幅数メートルの2級河川・総頭(そうず)川。川幅は狭いものの、底は深い。ちょろちょろと水が流れる様子は、どこにでもあるような市街地の中小河川の類いにしか見えず、流域約27ヘクタール、350戸の浸水被害があった場所には思えなかった▼しかし、その後の専門家や行政の検証結果を見て、それは浅はかな印象だったと気付いた。山林が海面にまで迫る地形は、過去にも土石流などの被害を度々発生させていた▼管理が行き届いているかにみえる中小河川でも、短時間に大雨が降って周囲から水が一気に入り込む、流木が橋脚にひっかかり流れをせき止める-などの悪い条件が重なることで、川はいかようにも変わる▼川(かわ)相(そう)を読むのは釣りの時に限らない。普段から暮らしの場の周辺にある小川にも目を向け、水があふれる最悪の場合に備えたい。(万)