松徳学院60周年記念講演会で、「置かれたところで咲く」と題して講演する渡辺和子さん=2016年10月、松江市西津田6丁目のプラバホール
松徳学院60周年記念講演会で、「置かれたところで咲く」と題して講演する渡辺和子さん=2016年10月、松江市西津田6丁目のプラバホール

 『置かれた場所で咲きなさい』は、ノートルダム清心学園(岡山市)理事長を務めた修道者・渡辺和子さん(1927~2016年)のベストセラー。タイトルからアジサイの花を連想する。土壌により花の色が変わる。一般的に酸性なら青、アルカリ性なら赤い。青も赤も美しく梅雨空に映える▼11年前に発売された本を書店で見つけ「自分には無理だ」と思った。不平不満と不安の中、咲けるような気配がない。咲かぬまま枯れるつぼみだって現実にある▼手に取る読者の心理を察してか、渡辺さんは前書きでタイトルの由来を説明した。短い英詩の<神が植えたところで咲きなさい>から取ったという。36歳でカトリック系大学のトップとなり、業務に追われ心乱れる日々が続く中で出合った言葉だそうだ▼神のおぼし召しや神の試練と、神を中心に置き思考する点で一神教の強みを感じる。日本の八百万(やおよろず)の神々に囲まれていると、正解のなさや相対的な関係で物事が進むことが多く、何かと振り回されやすい。凡庸な人間社会のはるか上にそびえた絶対軸があれば、割り切れて救われた気になる▼とはいえ、渡辺さん自身も迷いの連続で、置かれた場所でどうしても咲けない時はあると記述。そんな時は根を下に下に下ろして張るとある。次の花への期待感。そろそろ見頃が終わり、見栄えが悪くなってきたアジサイを見て、冒頭の言葉をかみしめる。(板)