働く身でありながら、筆者は2002年に1週間、英国でホームステイした。短期ではあるが、大学時代に描いた留学の夢が卒業から4年後にかなった▼ステイ先で筆者より少し年下の長男が、大学に通う三男の成績の悪さをなじっていた。どうにか聞き取れた英単語をつなぐと「おまえ、何してるんだ。お父さんがすごく心配しているぞ」といったところか▼わが家でもあった光景だなあと思うと、ふと寂しくなりホームシックを体感した。一人旅のホテル暮らしなら家を思い出さないが、言葉の通じぬ見知らぬ国で親切にされ、穏やかな家族模様を見ると特別な感情が湧いた。帰るときは一変、ずっと見送ってくれるファミリーの視線を背中に感じながら、涙をこらえるのに苦労した。人と人の縁が心を温かくも悲しくもする▼新型コロナウイルスで多くの若者の渡航が止まっている。大学在学中は留学のチャンスだが、就職活動を考えると時間は限られる。海外に憧れ、語学を磨く学生には、じれる日々が続いている▼一般の日本人と外国人の交流の歴史は新しい。文物や物が輸入されてきた中国や朝鮮半島でも付き合いが古いようで、そこの住人の人となりを知り始めたのは明治維新後。絶対量はまだまだ足りない。意外に同じで結構違うー。多くの人のそんな交流体験が無用な争いの回避につながると信じる。若き「日本代表」の足止めが憎い。(板)