雲南市が開いた脱炭素フォーラムで講演する星子桜文さん=雲南市木次町里方
雲南市が開いた脱炭素フォーラムで講演する星子桜文さん=雲南市木次町里方

 道すがら見かけていた小さな畑が、アスファルトで固めた駐車場になっていることが増えた▼家庭菜園も高齢化による担い手不足が進んでいるのか。よそ様の土地のことだが、大地が呼吸できなくなるようで勝手に心を痛めている。先月の豪雨で冠水した出雲市の市街地からは、「田んぼが減ったことも一因」との声を耳にした▼そんな折、雲南市が開いた脱炭素フォーラムで興味深い話を聞いた。講師の星子桜文(あや)さんは、熊本市で廃食用油から軽油の代替となる高純度のバイオディーゼル燃料を製造する会社の代表。2016年の熊本地震で、熊本城から12キロ東の工業団地内の工場は多くが被害を受けたが、自社工場は「無傷だった」▼理由は敷地内の砂利。新築したばかりで舗装する資金がなかったことが幸いし、砂利が揺れを吸収したという。舗装していれば固めた地面と共に倒壊していただろうと予測。おかげで「燃料を供給してもらえませんか」という熊本県庁からの電話を受け、緊急車両や孤立した南阿蘇村の避難施設にある緊急用ディーゼル発電機へ燃料を提供できた。▼講演の主題はバイオディーゼルだったが、砂利の話が印象深く、名刺を交換した際にも話題にした。工場が、船の構造を応用した構法だったことも防災に影響したのでは、と話してくれた。その後、事業を拡大し、会社も成長したが、工場敷地は「今も砂利のまま」という。(衣)