「植物学者も目にしない幻の種」と呼ばれるハマボウが、島根県知夫村の無人島でひっそりと開花している。全国的にも希少なことから、地元からは文化財指定を目指すべきだという声がある。
ハイビスカスやオクラと同じアオイ科のハマボウは、奄美大島(鹿児島県)を南限に九州や四国、本州の太平洋側に分布。知夫村島津島の海岸沿いには幼木も含めて計8株が自生し、大きい株で高さ約3・5メートル、網の目のように枝葉が波打ち際に向かって広がっている。
例年通り7月中旬から直径5~7センチほどの黄色い花が開花した。早朝につぼみが開き、夕方にはしぼんで落ちるのが特徴で、8月いっぱいは新しい花が次々と咲くとみられる。
ハマボウの北限は神奈川県の三浦半島、日本海側では山口県萩市とされていたが、2011年に海士町豊田の植物研究家、丹後亜興(つぐおき)さんが偶然に発見し、北限地が塗り替えられた。
満潮時の海水と岸の境目で、真水の染み出す砂泥地という限られた環境を好むため個体数が少なく、知夫村文化財保護審議委員の竹川千里さんは「北限のハマボウとして県指定文化財を目指したい」と話す。
ハマボウの見学希望者は、知夫里島観光協会が案内する。 (鎌田剛)