トウモロコシ。幼児は「とうもころし」と言い間違えることもあるという
トウモロコシ。幼児は「とうもころし」と言い間違えることもあるという

 今は母親になった娘が幼い頃、トウモロコシのことを「とうもころし」と言うので苦笑していた時期がある。幼児には、その方が言いやすいらしい。珍しいケースではないそうだ▼幼児に限らない「音位転換(転倒)」と呼ばれる現象で、そのまま日本語として定着することもある。代表例が「あたらしい(新しい)」と「さざんか(山茶花)」。前者は「あらたし」、後者は「さんさか(さんざか)」が変化したとされる。「だらしない」も本来は「しだらなし」だという▼一方で「おさがわせ(お騒がせ)」や、近年よく話題にされる「ふいんき(雰囲気)」は誤用。悩ましいのは「したづつみ(舌鼓)」。江戸期からの誤用が一般化したらしく『広辞苑』にも載る▼ただし、あまり偉そうなことは言えない。中海干拓淡水化事業で当地が揺れた頃、なじみの薄かった外来語の「シミュレーション(模擬実験)」を、何度も「シュミレーション」と言い間違えた▼普段の生活は、話し言葉が中心になるため、言いやすさが言葉の変化や寿命に影響するのだろう。スマートフォン時代になった今は、文字の「打ちやすさ」も関係しているのかもしれない。「きもい」が広まったのも手短に表現できて、語調がいいからだとの見方もある。ちなみにポップコーンが大好物の孫娘は、トウモロコシのことを「コーン」と呼ぶ。音位転換の心配はないが、それはそれで微妙だ。(己)