夕暮れ時、家に向かう車列の赤いテールランプが、あかね色の空に映えていた。日が落ちるのが随分早くなった。秋が深まるにつれ、家々の明かりにぬくもりを感じるようになる▼きょう10月21日は「あかりの日」。1879(明治12)年のこの日、トーマス・エジソンが、世界で初めて実用的な白熱電球を開発したことにちなみ、日本照明工業会などが制定した▼発明王による白熱電球の開発は、光を発するフィラメントの素材が鍵だった。炭化させた木綿糸で、実際に使える程度の点灯時間になった後、6千種類の材料で試行錯誤。研究室にあった扇子の竹を使ったところ点灯時間が延び、世界中の竹を採集した。その中で特に長く点灯したのが、現在の京都府八幡市の竹だったという。耐久性が一気に高まり、製品化につながった▼画期的な発明から140年余り。恩恵を受けて世の中は大きく変わった。科学や技術の進歩を考えると「たった140年で」という思いすらする。明かりが織り成す夜景は観光スポットにもなり、多くの人々を呼び込む。色とりどりの輝きを心置きなく楽しめるのも、平和であるからだ▼世界では、生活の明かりを失った人たちがいる。ロシアによるウクライナ侵攻、イスラム組織ハマスとイスラエル軍の大規模戦闘の被害は民間人に及ぶ。穏やかな日常を象徴する明かりが、人の手によって奪われることのない世界を願う。(彦)