家宅捜索のため自民党安倍派(清和政策研究会)の事務所に向かう東京地検特捜部の係官ら=19日午前9時58分、東京都千代田区
家宅捜索のため自民党安倍派(清和政策研究会)の事務所に向かう東京地検特捜部の係官ら=19日午前9時58分、東京都千代田区

 国会議員の基本的な条件とは何だろう。パナソニックの創業者で「経営の神様」として知られる松下幸之助(1894~1989年)は著書『私の夢・日本の夢 21世紀の日本』(1977年発刊)の中でこう記している。

 自分のこと以上に国家国民の繁栄、平和、幸福を思う心がなければならないということ。どの党に属そうとも、党利党略にとらわれてはならないし、どのような団体から推されて議員になろうとも、その団体の利害に左右されてはならない。あくまで、国民全体の利益を優先して考え行動する。その意味で「一人一党」でなければならない。

 21世紀初頭の日本はこうあるべきだという願いを込め、未来小説の体裁で自らの考えを提言した。ところが半世紀近くたった現在、経営の神様の夢はかなうどころか、正反対の方へ向かっている。

 自民党派閥の政治資金パーティーを巡る裏金疑惑で東京地検特捜部がきのう、政治資金規正法違反の疑いで安倍派(清和政策研究会)と二階派(志帥会)の両事務所を家宅捜索した。安倍派の裏金は最近5年間で5億円規模に上る可能性があるという。

 疑惑発覚後、裏金づくりに「派閥の指示があった」と明かし、副大臣辞任を嘆いた安倍派議員がいたが、嘆きたいのはこちらの方。一体どちらを向いて議員活動をしていたのか。国民でなかったのは想像できる。経営の神様のため息が聞こえてきそうだ。(健)