使い古された言葉だが「一年の計は元旦にあり」という。初詣を早々に終え、今年の計画を立てた人もいるのではないか。この人はどうか。「パ・リーグの野球を経験したい」と8年間在籍したプロ野球・広島からオリックスへFA移籍した西川龍馬選手(29)である▼高いミート力で「天才」と呼ばれる左打者は、新天地の本拠地・京セラドーム大阪の近くで育った。高校は福井の敦賀気比だが、出生地は母親の実家がある出雲市。「初詣は例年、出雲大社」と6年前、本紙のインタビューに答えていた。山陰人として何だか親しみが湧いてくる▼名前の由来は大方の想像通り、幕末の土佐藩士・坂本龍馬。歴史好きな父親が名付けたという。「日本の夜明けぜよ」という土佐弁の名言を思い出すが、実は龍馬の言葉ではない。幕末を舞台にした時代劇「鞍馬(くらま)天狗(てんぐ)」で、架空の主人公が発したせりふが混同され広まったらしい▼今年は「辰(たつ)年」。動物に当てはめると龍(竜)になる。権威や隆盛の象徴で、出世や権力に大きく関わる年とされる。だからだろうか。ロッキード事件(1976年)やリクルート事件(88年)といった汚職事件は辰年に発覚。自民党派閥を巡る裏金事件の解明も辰年に持ち越された▼龍馬は「日本を今一度せんたくいたし申候(もうしそうろう)」との言葉を残した。幕藩体制で身動きできない国を洗濯し、錆(さび)を洗い流すという意味。現代にも響く言葉だ。(健)