白煙が立ち上る石川県輪島市の火災現場=2日午前8時9分(共同通信社機から)
白煙が立ち上る石川県輪島市の火災現場=2日午前8時9分(共同通信社機から)

 テレビ画面から止めどなく流れる緊急地震速報の乾いた機械音。大津波警報の発表を受けて「今すぐ逃げてください」と繰り返し叫ぶアナウンサーの声。震源地から遠く離れた山陰地方でも長い横揺れを感じ、津波注意報の解除まで18時間近くかかった▼元日午後4時10分ごろに発生し、石川県で最大震度7を観測した地震。気象庁は早々に一連の地震を「令和6年能登半島地震」と命名。正月気分が一気に吹き飛んだ▼冒頭の非日常的光景に、2011年3月11日の東日本大震災で町が大波にのみこまれた惨事を思い出した人も多いだろう。無理もない。あの後幾度となく震度7や6強の地震は起きているが、大津波警報が出たのは、あの日以来なのだから▼東京電力福島第1原発事故を引き起こした巨大地震からはや13年。私たちが抱いた地震や津波に対する畏怖感は鈍っていなかったか。最たるのがわが国の宰相。古里へ帰れない被災者が多くいるというのに「原発回帰」へかじを切ってしまった。既存の原発を使うだけならまだしも、強引に「寿命」を延ばし、新増設まで進めるという。まるであの日を忘れてしまったかのようだ▼今回の能登半島地震から一夜明け、被害状況が明らかになってきた。震源地に近い北陸電力志賀原発に大きな異常はなかったが、建物の倒壊や火災が相次ぎ、多数の死傷者が出た。一日も早い復旧を願う年明けになった。(健)