島根県内唯一のデパート「一畑百貨店」の閉店まで、最後の1週間を迎えた。昭和生まれの世代にはさまざまが思いがよぎることだろう▼移転しながら営業を続けた松江店もさることながら、誇らしげに「電車バスのりば」の看板が掲げられ、グループの私鉄やバスターミナルにつながっていた「一体感」で思い出に残るのが、2000年まであった旧出雲店だ▼その〝晩年〟は周辺に相次いでできた大型ショッピングセンターとの競合にさらされ、事実上の閉店に追い込まれたが、「祝い事があれば一畑へ」という意識は、1970~80年代を出雲で過ごした当方には、強く刷り込まれていたように思う▼私事で恐縮だが、年始に訪れたいとこ宅で、蝶(ちょう)や椿(つばき)などの柄が入った、くし飾りを初めて見せられた。今は亡き当方の父が40年ほど前に、「成人式だから」と、めいっ子のために一畑百貨店の出雲店へ急きょ駆け込み、商品の陳列棚から選んできた一品だという。贈り物で人と人とをつなぐデパートの存在感を、長く記憶にとどめておきたい▼「成人の日」を前に、松江市できのう、旧成人式「はたちの集い」があり、晴れ着やスーツ姿の若者たちが、JR松江駅に近いくにびきメッセに集まった。「昭和」がだんだんと遠くなり、消費形態や価値観が変わっていく令和の時代、20歳を迎えた若者は消えゆくデパートをどんな思いで見ているのだろうか。(万)