米宇宙船アポロ11号の船長だったニール・アームストロング氏(NASA提供・AP=共同)
米宇宙船アポロ11号の船長だったニール・アームストロング氏(NASA提供・AP=共同)

 本紙くらし面で連載中の「OriHime(オリヒメ)とわたし」の17日付記事に目を見張った。執筆者の三好史子さん(松江市在住)は筋肉萎縮などが起こる難病「脊髄性筋萎縮症(SMA)」を患い、不自由ゆえに無重力の宇宙への憧れを書いた▼地球では服もペットボトルも、そもそも体も重く、とても疲れるという。自力で寝返りが打てず体重で圧がかかるところが痛くなる…。続けて<宇宙に行ったり、ほかの惑星で生活したりという、人類が長く夢見てきたことが実現したら、もしかしたら身体障害という言葉がなくなる日が来るかもしれません>とまとめた▼遠い時空にあると捉えていた宇宙研究の価値を身近に感じた。同時に、独自の宇宙論で業績を上げた理論物理学者スティーブン・ホーキング博士(1942~2018年)を思い出した。難病で体を動かせなかったが宇宙旅行を切望し、航空機で無重力状態を体験するパラボリックフライトにも挑んだ▼宇宙航空研究開発機構(JAXA)が小型探査機で月着陸に成功した。世界では5カ国目で、火星衛星などの探査に弾みがつくと期待される▼大航海時代のような各国の競争や利害対立が生じたとしても、宇宙は夢のフロンティア。1969年に人類史上初めて月に降り立ったアポロ11号のアームストロング船長が語った「小さな一歩だが人類にとっては偉大な躍進だ」は、今も生きている。(板)