島根原発2号機の再稼働を巡る審査書案について議論する原子力規制委員会の更田豊志委員長(右から2人目)ら=東京都港区、原子力規制委員会
島根原発2号機の再稼働を巡る審査書案について議論する原子力規制委員会の更田豊志委員長(右から2人目)ら=東京都港区、原子力規制委員会
島根原発2号機の再稼働を巡る審査書案について議論する原子力規制委員会の更田豊志委員長(右から2人目)ら=東京都港区、原子力規制委員会

 中国電力島根原発2号機(松江市鹿島町片句)を巡り、原子力規制委員会が23日、安全対策が新規制基準に適合していると認める「審査書案」を了承した。これにより、県庁所在地に立地する全国唯一の原発が事実上の審査合格となった。今秋にも正式合格するとみられ、再稼働の「地元同意」手続きが始まるが、不祥事が相次ぐ中電には厳しい視線が注がれ、住民避難の実効性にも多くの不安要素がある。審査のポイントを振り返り、主な課題を取材した。

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 中電が2013年12月に原子力規制委員会に新規制基準適合性審査を申請してから7年半。これまでに合格した原発の中で最長となり、審査会合は184回を重ねた。

 「非常に近い位置にある断層の長さは慎重に審査した」。事実上の合格を決めた直後の記者会見で、規制委の更田豊志委員長は真っ先に「宍道断層」の議論を持ち出した。

 審査は、島根原発の約2キロ南に存在する宍道断層の長さの評価が定まらず長期化した。東京電力福島第1原発の事故後に発足した規制委は、原発の耐震設計の目安となる揺れ「基準地震動」の算定根拠になる断層の長さを重要視。審査会合では原子力規制庁の調査官が「この地点で(断層が)ないと言い切れるデータだと胸を張って言えますか」などと詰め寄り、詳細なデータに基づく説明根拠の提示を重ねて要求した。

 中電が追加のボーリング調査や音波探査を続けた結果、申請時に約22キロだと説明した断層の長さは約25キロに延び、17年9月には松江市魚瀬町付近から美保関灯台付近に至る約39キロに見直した。中電の清水希茂社長は「(これ以上断層が)ないことを証明するのが一番苦労した」と振り返る。

 基準地震動が600ガルから820ガルに上振れしたことで、約75億円で建設した免震重要棟の床面の一部にひびが入る恐れが判明。隣接地に緊急時対策所を新設する必要に迫られた。

▼建設費の2倍

 中電は重大事故対策として、原子炉格納容器の破損を防ぐフィルター付きベントの機能強化や、炉心溶融(メルトダウン)で溶け落ちた燃料を受け止めるコリウムシールド(耐熱材)を設置。全電源を失った場合に備え、ガスタービン発電機などを高台に置いた。

 安全対策に投じる費用は年々膨らみ、1~3号機を合わせた総額は、2号機の建設費の2倍に当たる6千億円程度となった。5年の猶予があるテロ対策施設の整備費を含めると、費用はさらに上乗せされる。

▼統一基準なく

 原発の安全対策は計5層の「深層防護」という考えに立つ。第1~3層は故障の防止や事故の被害低減で、第4層がメルトダウンなどの重大事故対策だ。規制委の審査対象は第4層までで、原発から大量の放射性物質が放出された場合に発動する第5層の避難計画は、関係自治体が計画作成の責任と負担を負う。

 だが、住民の被ばくを最小限に抑えるための明確な統一基準はなく、計画が「机上の空論」となってしまう恐れもある。

 原子力災害に詳しい環境経済研究所(東京都)の上岡直見代表は、島根原発の30キロ圏内の特徴について、人口が約46万人と多い一方、避難道路の大部分が片側1車線で山間部を通る割合が全国で最も大きいと指摘。「住民の避難が困難を極めるのは間違いない」と警鐘を鳴らす。規制委の審査に合格してなお、深く議論しなければならない課題は多く、中電が目指す早期の再稼働への道のりは険しい。