死んだら人はどうなるのか。昔からの問いに誰も明確に答えられず、死は恐怖のままである。大学時代に不思議な講義に出合った。臨死体験がテーマでテレビの特集を見せられた。番組の進行役だったのが23日に死去が報じられた評論家でジャーナリストの立花隆さん。名著『臨死体験』がある▼番組と講義は励まされる内容だった。当時の筆者は将来の希望を抱けず、幸薄い人生の後、跡形もなく消え去るのだろうと悲観していた。だから交通事故や自殺未遂で意識不明の重体となり、何カ月も生死をさまよった経験を持つ人々がその間、何を体験したのかを紹介する番組に元気をもらった。「死後の世界はある。駄目なりに頑張ろう」。そう信じ込んだ▼オウム真理教の地下鉄サリン事件の記憶が生々しい時期で宗教界全体に逆風が吹く中、人々がなぜ宗教を必要とするのか、未熟なりに考えるきっかけになった▼あれから四半世紀。身内や友人・知人の死をいくつか経験した。悲しみと向き合う時、いつもあの番組と講義を思い出し慰めとしている▼立花さんの著作量は膨大で縦横無尽。科学・非科学、善悪、賢愚の区別などなきがごとしだった。発想・理解は到底及ばず、同業の後輩としては幕下が大横綱を仰ぎ見る感じである。生前「人間の失敗と愚行の集積でもある世界史を学ぶこと」とのアドバイスを残した。凡庸なりに唯一、守れそうだ。(板)