神戸学院大の上脇博之教授
神戸学院大の上脇博之教授

 島根1区を含む衆院3補選(4月16日告示、28日投開票)が迫ってきた。最大の争点に浮上する「政治とカネ」の問題を巡り、どう対応すべきなのか。有識者や国会議員に聞いた。
(聞き手は東京支社・原田准吏)
 

 ―国会で政治資金規正法の改正に向けた議論が深まっていない。

 「規正法は説明責任を果たすためにある法律だ。違法や不適切があった場合、政党や政治家は疑念を払拭する必要がある。ただ、自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件などの真相究明が進んでいない。事件を起こした政治家が責任を取り、裏金をなくす改革を打ち出さないと国民の納得が得られない。今はいずれも駄目だ」

 ―政治資金パーティーや企業・団体献金の禁止は必要か。

 「政治資金パーティーで裏金がつくりやすい理由は企業が券を大量に購入するからだ。企業が券をいくら買ったかは報告する制度がなく、企業側の自主的な公表がなければ誰もチェックできない。受け取る政治団体側の収入の記載が真実かどうかを確認できない。券購入者の公開基準を引き下げたとしても同じだ。透明度を高めるだけで裏金はなくならず、根元から絶たないと駄目だ。個人のパーティーやオンライン講演会も禁止するべきだ」

 ―禁止すると政治資金を集めることが難しくなる。

 「自民が毎年、いくら翌年に繰り越しているかというと200億円を超えている。家庭でもお金に余裕があるから『へそくり』ができる。余裕があるから裏金をつくれるのではないか。日本は民主主義を機能させるために必要な公的な経費が充実している。選挙公営制度で選挙期間中のビラの作成などは賄え、国会議員になると政策秘書1人と公設秘書2人の給与、年間1200万円の調査研究広報滞在費、年間2千万円程度の報酬が出る」

 ―罰則の強化が必要だ。

 「議員も連帯責任を負う『連座制』を導入すれば問題が全て解決するかと考えるのは大間違いだ。会計責任者が事務担当者に責任を押し付けてしまうなど政治家の責任を問うハードルは高い。『議員が会計責任者の選任と監督で相当の注意を怠った場合に処罰する』との現在の条文を監督のみで可能にするなどの改正も必要だ」

 ―政治資金を監督する独立した第三者機関を設けるべきだとの意見がある。

 「現時点では消極的だ。政治団体がかなり多い中、少人数では手が回らない。政権が野党のチェックのために利用する懸念もある。公金の違法な支出をチェックするために全国に市民オンブズマンができた。同じように全国に政治とカネの問題をチェックする市民運動が立ち上がるとこれまでと違ってくるはずだ」 
 

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 かみわき・ひろし 鹿児島県出身。関西大法学部卒。神戸大大学院法学研究科博士課程後期課程単位取得。北九州大(現北九州市立大)の教授などを経て、2015年から現職。専門は憲法学。「政治資金オンブズマン」代表などを務める。自民党派閥の裏金づくり発覚のきっかけとなる刑事告発をした。65歳。