日本で中国のことを「中共」と呼んでいた時代がある。中国共産党の略で、1972年の日中国交正常化以前は新聞などのメディアでも使われていた。中華民国として承認、その後国交を断った台湾と区別するためだったが、権力構造で党と国家がほぼ重なる中国では、中共という言葉は普通に使われているという▼中国共産党が明日、党創建100年の記念日を迎える。日本と戦った時代を含め、その歴史は波瀾(はらん)万丈の劇場型。中でも戦後の大躍進運動と文化大革命は、多数の犠牲者を出すなど国を疲弊させ大混乱に陥れたが、党創立者であり運動の指導者だった毛沢東は今の中国でどう評価されているのか▼構えた公式見解とは別に市井の人々の見方が気になる。中国人女性で松江市国際交流員を務める郭晨然(かくしんぜん)さんに尋ねてみた▼「年配になるほど経済格差がなかった毛時代を懐かしむ人が多いが、若者は距離を置く傾向」と郭さん。建国の父でもある毛沢東には功罪あるが、「功が罪を上回る」と感じる国民が8割以上という▼最近の習近平総書記(国家主席)は、中国独自の社会主義を目指した毛思想になびいているそうだ。しかし、理念を高く掲げるほど、現実は過激に走りやすい。日本を抜き米国に迫る中国の経済力。その自信が海洋進出など対外膨張主義を拡大していないか。「自分ほど偉い者はいない」と周囲を見下す中華思想に自制を。(前)