「スイッチが入る」。仕事とプライベートなど、オンとオフがはっきりと切り替わる際に、例えて使う▼先日、鳥取県江府町役場で、町の選挙管理委員として何度も投票立会人を務めてきた男性(71)から聞いた。投票手続きに立ち会い、公正に行われるよう監視する役目。「投票所にいると、人が入ってくるのが感覚で分かる。それでスイッチが入る」▼町は16日に告示される町長選と町議再選挙で、全国初の「オンライン立ち会い」を実施予定だ。国政、地方を問わず下がる一方の投票率、減り続ける投票所。立会人不足が投票所を設けるネックの一つになっており、鳥取県が総務省を動かす形で、立ち会いのオンライン化が実現しようとしている▼男性はリハーサルで、役場の一室からモニター越しの立ち会いを体験。通信が途絶えた場合、携帯電話でやりとりするトラブル対応も確認し「スムーズだった」と振り返った▼その上で口にしたのが、スイッチの例え。「本番は長時間。モニター監視が苦痛にならないか。気持ちが切れるんじゃないか」。立会人の負担を減らす狙いに反し、新たな負担を押し付ける可能性もある。オンライン立ち会いは、投票しやすい環境づくりの第一歩。「選挙離れ」で開いた距離を縮める、より良い仕組みづくりの出発点は、率直な現場の声だ。画像はどうか、音声はどうか-。そんな質問に終始した取材姿勢を省みた。(吉)