鼻緒を足指でつかんで歩くことで外反母趾などの改善効果があるとされる下駄(資料)
鼻緒を足指でつかんで歩くことで外反母趾などの改善効果があるとされる下駄(資料)

 雲南市と松江市にまたがる八雲山(標高424メートル)の山頂は適度な広さの草むらがある。知人と登った先日、雨上がりの直後で湿った草の上を、誰もいないのをいいことにはだしで歩き、大の字になった▼30分ほど山の精気を身体に受けると、パソコンに向かうデスクワークでたまった日頃の疲れや毒素が浄化されたような気分になった。サウナと水風呂を繰り返して得られる快感「ととのう」といったところ。手頃なデトックス(解毒)と思うが、今は外で寝転ぶ大人を見ることは少ない▼<いいえ 草にねころぶ あなたが好きだったの>という歌詞がある太田裕美さんの代表曲『木綿のハンカチーフ』の発売は49年前。寝転ぶまではいかずとも、草や土、砂の上をはだしで歩くのは気持ちいいが、そんな場所が身近にない、汚れる、虫がいて嫌だ、などと敬遠されるようだ▼個人的にここ数年、車中や職場に靴と靴下を備えつつ、夏前から下駄(げた)を履いている。下駄の台の木が汗を吸うのか、通気性がよくやめられない。高温多湿の日本に適し、水虫対策になるほか、鼻緒を足指でつかんで歩くことで足裏にある「足底筋膜」が刺激され、外反母趾(ぼし)や扁平(へんぺい)足を予防、改善する効果もある▼こんなに素晴らしい履物を、日常的に使わなくなったのは残念だ。歌詞にある<見間違うようなスーツ>を着るようになったため。自然と共にある暮らしはどんどん遠のく。(衣)