サヨナラ勝ちで甲子園出場を決め、喜びを爆発させる鳥取城北の選手たち=25日、鳥取市・ヤマタスポーツパーク野球場
サヨナラ勝ちで甲子園出場を決め、喜びを爆発させる鳥取城北の選手たち=25日、鳥取市・ヤマタスポーツパーク野球場

 高校3年生だった2002年7月。夏の甲子園出場を懸けた全国高校野球選手権島根大会の1回戦に出場した。試合は4―1とリードし、九回2死走者なし。1、2年時は1回戦で1点差負けしており、悲願の「夏1勝」は目前だった▼ところが土壇場で同点に追い付かれ、延長の末、またもや1点差で敗退。甲子園の夢はついえた。悔しくてその後、数日間は何もやる気が起きなかった▼苦い青春の記憶を思い出したのは、おとといの鳥取大会決勝で、米子松蔭が九回まで4―1とリードしながら鳥取城北に逆転サヨナラ負けを喫したから。打たれた主将でエースの山本裕司投手が口を真一文字に結び、整列に向かう姿が印象的だった。甲子園は目前だっただけに無念さは当方とは比べものにならないだろう▼今年の高校野球で最後まで勝ち残れるのは、全国3441チームのうち一つだけだ。悔しい負け方をすればするほど、立ち直るまでに時間がかかるかもしれない。それぞれ境遇は違うとはいえ、負けた全チームに漫画『スラムダンク』に登場する常勝・山王工業監督の名言を贈りたい。「はいあがろう。『負けたことがある』というのがいつか大きな財産になる」▼そしてきょうは島根大会で優勝校が決まる。優勝は「優れて勝つ」のほかに「優しく勝つ」とも読める。勝って喜ぶだけでなく、負けたチームの悔しさに配慮できるチームが一番強い。(吏)